生命へ触れるということ

つむぎのいえの大切にしていること
私たちの日常は、「触れる」という行為で彩られています。
朝、愛する人の温もりに触れて目覚めたり、お気に入りのマグカップの感触を確かめながら一日を始めたり。何気ない瞬間にも、私たちは常に何かと「接触」し、世界との繋がりを感じているのではないでしょうか。
私がセラピストとしてお客様のお身体、そして心へ「触れる」時、その行為は日常とは少し異なる、深い意味合いを帯びてまいります。それは、まるで神聖な領域に心を澄ませて向き合うような、そんな感覚に近いかもしれません。アーユルヴェーダのオイルトリートメント「アヴィヤンガ」は、【愛情を持つ手】と言われています。
「触れる」というよりも「生命へ触れる」という言葉がしっくりとまいります。それは、その方の命そのものに触れさせていただいているのだと感じるからです。この「手」を感じる施術は、薬草オイルの力ももちろんですが、アーユルヴェーダならではの手技なのではないでしょうか。この思いは、私の胸に深く響き、今もセラピストとしての在り方を問い続ける大切な指針となっています。
お客様に触れさせていただく時、それは単に皮膚や筋肉という物質的なものに触れているのではありません。その方が歩んでこられた人生、内に秘められた感情、言葉にならない記憶、そして魂そのものに、敬意をもってそっと触れさせていただいているのだと、常に感じています。だからこそ、そこには大きな責任が伴うのです。
私自身、過去には「暗黒期」と呼んでいる、言葉では言い尽くせないほど辛い時期を経験いたしました。誰にも触れてほしくないほどの孤独を感じながら、心の奥底では、誰かの温かい手に触れてほしいと切に願っていた、そんな矛盾した日々がありました。その両極を知るからこそ、「触れる」ことの繊細さと、それがもたらす計り知れない力を、身をもって理解しているつもりです。
お客様からは、施術で触れられた際に、
「こんなに頑張っていたのですね」
「こんなに疲れていたのですね」
「こんなにも力が入っていたのですね」
「悲しかったのだと、本当の気持ちが分かりました」
「自分のことを後回しにしていたことに、初めて気が付きました」
といったお声を、それはそれはよく頂戴いたします。
なんとなく日々頑張れてしまうし、頑張らざるを得ない状況もあるし、そして出来てしまうからこそ、ご自身のからだとこころの声に耳を傾けることを忘れてしまうのですね。やさしい手に触れられてはじめて気付くことは、私自身も本当によくございます。この「触れる」ということ。からだのことではありますが、実はこころのことでもあり、その繋がりに私は深い興味を持ち、日々探求を続けております。身体の中心から、力任せではない「愛情を持つ手」で。長年のコンプレックスだったこの少し厚みのある手も、施術では存分に活かせていると感じています。お客様へ触れる前には、まず自分自身を整えることを何よりも大切にしております。それは技術的な準備以上に、自身の心と体を清浄に保ち、クリアな意識で向き合うということです。アーユルヴェーダの教えを道しるべに、日々の生活の中で自身と対話し、バランスを整える。そうして初めてお客様にとって安心できる「器」となり、真の癒しを届けられる「手」となれると信じております。
セラピーにおける「接触」は、一方的な行為ではありません。それは、お客様との間に生まれる、言葉を超えた静かな対話であり、エネルギーの繊繊な交流です。手のひらを通して伝わってくる微細な緊張やこわばり、そして時に、ふっと緩む瞬間の安堵感。それらは、お客様の心が少しずつ開かれていくサインなのではないかと感じ、その度に大きな喜びを覚えます。「愛情を持つ手」は、物理的な「手」だけでなく、真心、セラピストの生き方そのものが映し出されるもの。そのある種の恐れと責任を持って、日々を大切に生きております。
過去の傷つきやトラウマは、私たちを「触れられる」ことに対して臆病にさせることがございます。私もそうでした。しかし、安全で信頼できる環境の中で、敬意のこもった温かい「接触」を体験する時、凍てついていた心はゆっくりと溶け出し、本来の柔らかな輝きを取り戻していくことがあるのです。
私は、人の魅力やその人らしさ、そしてその方の成長にとても興味がございます。そこに寄り添いたい、という強い思いがあります。おとなもこどもも、性別や肩書き、生きてこられた道筋といった枠に囚われることなく、その方ならではの輝きに気づかせていただくことは、私の喜びです。
「つむぎのいえ」では、まさにそのような体験をしていただければと願っております。
「ほっとしたいな」
「自分への優しさを感じたいな」
「わたしを大切にしたいな」
「わたしのきらめきに気づきたいな」
そんな風に感じられた時、ぜひ「つむぎのいえ」へお越しくださいませ。安心して一息つけて、あなたの魅力がさらに輝きだすような場所を整えて、お待ちしております。「触れる」ことは、時に最も原始的で、そして最もパワフルな癒しの手段となり得るのかもしれません。なぜなら、私たちは皆、誰かと繋がり、愛し愛されたいと願う、本質的な存在だからなのでしょう。
セラピストとして、そして一人の人間として、これからも「触れる」ことの奥深さを探求し続けてまいりたいと存じます。この手のひらに宇宙を感じながら、必要とされている方々に、温もりと、癒しと、そしてその方自身の「きらめき」をお届けできますように。
本日も、皆様にとって素敵な一日となりますように。